カナダ、ロッキー山脈のクマ騒動(その7) [旅行]
たとえクマが私達を襲ったとしても、それはクマの領域を侵して踏み込んだ人間の方が悪いのだ。誰も責められないが‥‥それにしてもユースのお兄さんも本屋のおじさんも気軽にこの道を教えないでほしかった。
本来クマは臆病者だとよく聞く。だから人間の存在をあらかじめ知らせるために、何か音を鳴らしながら行くとクマは近寄らないらしが、そうしたくても口が震えてしゃべる事さえ出来ない。青ざめる口びる、ひきつる顔の筋肉と何も言えない口、この状態が良くない事は重々わかっている。
しかし、極限状態になると、人間は色々思いつくものだ。「お、音、何か音をたてないと」その時、私はとっさに自分が先程から握りしめて入る物に気が付いた。
「ビンだ!」自然の中に捨てるのは、気が引けるとずっと手に持っていたジュースのビンだ。「このビンが役に立つ!」ふたを開けて小石を2~3個いれ、それを振ってみた。「カラガラカラーン!」その音はシーンと静まりかえった森の中で思いがけずよく鳴り響いた。緊張感から少し開放された、その勢いで私は夢中でそれを振り回した。
「これで助かる」私達はそう思った。
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