今回はプリッツエル王子のお話です。






プリッツエル王子は或る施設のごみ置き場を寝蔵にしていた野良猫でした。

そこは食べ物も乏しく、施設から出る残飯をあさって命をつないでいました。その施設では野良猫にエサを与える事を禁じていたので、人目に付かない様に時々僕もカリカリを少し与えていました。

2014年の1月、とても寒くプリッツエル王子はゴミ袋の間に潜り込んで寒さをしのいでいました。ある日プリッツエル王子が僕を見つけて尻尾をピーンと立てて近づいてきました。僕はエサを与えている事がばれそうで「あっちへ行きなさい」プリッツエル王子を追い払ってしまいました。

プリッツエル王子「どうして‥どうして僕に冷たくするの」と言うような悲しそうな目をしながら僕から遠ざかっていきました。その時の悲しそうに、何度も振り返り僕を見る眼差しは今でも忘れられません。

僕は帰ってamaguriさんと相談の結果、家に連れてくることにしました。

僕達は早速キャリーを持ってプリッツエル王子を引き取りに行ったのです。
その日はとても天気がよく、プリッツエル王子は施設の駐車場の片隅で日向ぼっこをしていました。

正直、エサは与えていましたが一度もプリッツエル王子に触れたことが無かったので、僕達が近づくと逃げてしまうかもしれないと思っていましたがプリッツエル王子は素直に抱かれキャリーに入ってくれたのでした。


我が家に来た直後のプリッツエル王子


鼻の先っぽは喧嘩をしたのか、欠けていました。


両腕の付け根当たりは、肉が見えるほど舐めて自ら傷を付けていました。



                  死の宣告



保護をして直ぐに矯正手術をするために獣医さんに行きました。
手術の前に血液検査をすることになりましたが、獣医さんから聞かされたのは「猫白血病が陽性ですね」という結果でした。
確かに検査器には薄っすらと青い反応が出ていました。
「気の毒だけど、この子は長くは生きられないと思うよ」プリッツエル王子には死の宣告に等しい言葉でした。
「どうします、手術をしますか?」と言われましたが、僕達は迷うことなく手術を承諾しました。たとえ短い命でも最後まで飼ってあげようと思ったのです。

しかし他に大きな問題が有りました。アマグリ村長ツムジくんがすでにプリッツエル王子と同じ器で一週間ほど一緒にご飯を食べていたのです。

獣医さんと相談の結果、この先2週間は
アマグリ村長ツムジくんプリッツエル王子とを完全に隔離してからアマグリ村長ツムジくんの血液検査をする事になりました。幸いなことに2ニャンとも猫エイズ、猫白血病とも陰性だったので予防注射をしました。これで安心とはいきませんが、この先何が有ってもこの子達を飼い続けようと思ったのです。


我が家に来た初日はあちこちにウンチやオシッコをしてしまいましたが、2日目からはちゃんとトイレで出来るようになりました。


                       発症?



我が家にやって来て、ひと月位した時にプリッツエル王子は突然42度の高熱を出し食べ物はおろか水さえも飲まなくなりました。

獣医さんに連れて行くと「発症したかもしれないな‥」と言われたのでした。
プリッツエル王子の眼を見ると眼球だけが左右に細かく揺れていました。獣医さんは揺れるその目を見て「脳まで侵されているかもしれないな‥」とつぶやきました。

治療は、インターフェロン注射を3日間して自宅で解熱剤をスポイトで飲ませ様子を見る事でした。

4日目には熱も下が食欲も出て来て一安心。



               消えた猫白血病





猫白血病の陰性を告げられてから、ちょうど一年が経ちました。その間プリッツエル王子は大きな病気をする事も無く、すくすくと育ちました。

僕はプリッツエル王子の病気に対して少し希望を持っていました。病気の事をネットで調べたりして、その希望は何となく膨らんでいました。

その希望を確かめるべく、もう一度獣医さんに頼んで血液検査をしてもらいました。「とても元気で、健康そうなんで」と獣医さんに言うと獣医さんは「発症しなければ案外元気ですよ、死ぬまで発症しない子もいるし‥」と言いながら検査をしてくれました。

しばらくすると獣医さんが大きな声で「消えている!」と言いながら診察室に入ってきました。「驚いた、反応が消えている!」と言って試験器を持ってきました。確かに以前は薄っすらと青い反応があたけれど、今回は全く反応がありませんでした。「目の揺れも無くなっている、驚いたなー」と獣医さんも驚きを隠せません。陰性反応が出たため当時は接種できなかった予防注射をして病院を後にしました。

原因は色々と考えられるけれど、とにかく猫白血病の反応が消えていました。これを僕は奇跡と信じたい。

あの時、施設から家に連れてくる事をためらっていたら、ひと月後にプリッツエル王子は熱を出し短い一生を終えていたかもしれない。

今日も僕の横で喉を鳴らしながら眠るプリッツエル王子を見ていると、とても幸せな気持ちになるのでした。


恋猫みよ子お嬢さんの隠れ家でくつろぐプリッツエル王子です。
プリッツエル王子の寝顔を見つめるみよ子お嬢さんの視線が熱い







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