ヨーロッパ旅行において避けては通れないもの、それはドロボウだ。特にフランスからスペインを通り、イタリアへ抜けようとすると必ずと言っていいほど彼らに出会う。しかも同じ路線で毎回だ。IC(インターシティ)の急行列車でさえ”ガタン”とある駅で止まると、なかなか動いてくれない。「じれったいなあ」と思っていても待ち合わせなどで仕方ないのだ。そんなときに限って乗客は眠くなる。

特に日本人はユーレイルパスなどという外人専用の一等車のパス券を持っているので、地元の人が二等車でぎゅうぎゅう詰めなのに、ガラガラのコンパートメントに一人~二人で乗っている。その二人とも深い眠りについている時など、ドロボウにとっては絶好のチャンス。

一部屋一部屋を魔法使いのおばあさんにそっくりの老婆がのぞきこむ。そしていつの間にか平和ボケして荷物を向かいの席や横の席に置いて、のんきに眠りこけている日本人から大事な荷物を音も無くスッと持ち去っていくのだ。