「たくろう」は幼い時から、人の指を一本ずつ吸うのが好きでした。その癖はおじいさんになっても,治っていませんでした。トコトコと僕の寝床にやってきて指をチュッチュ、チュッチュと吸います。きっと親と早く離され、その愛情を受けられなかったせいかもしれません。
例の「3バカトリオ」も半年もすると、ずいぶんと大きく育ち、やんちゃになってきました。そしていつしか「たくろう」をいじめる様になってきました。
amaguriさんが見た時は、大人しい「たくろう」を3匹で部屋の隅に追い詰めていたそうです。その時はamaguriさんが「3バカトリオ」を叱り、事なきを得ました。
「3バカトリオ」は生意気にも、いつも徒党を組んで外で遊んでいました。
ある日、僕が会社から帰ってくるとamaguriさんが興奮した様子で僕のところへ来てこう言いました。
「jyoji-san、あのね今日『たくろう』が凄かったんやで!」
「えー何があったん!」
amaguriさんが身振り手振りで話してくれた内容はこうです。
例の「3バカトリオ」が野良猫にいじめられていたそうです。いかにやんちゃでもまだまだ子供、大きな野良猫にはかないません。そこへ普段「3バカトリオ」にいじめられていた「たくろう」が駆けつけ、格闘の末その野良猫を撃退したそうです。
「物凄くカッコ良かったんだから!やっぱりあの子達を家族と思ってたんやねー!『たくろう』は!」といつまでも興奮さめやらぬamaguriさんでした。
「偉いな『たくろう』」そう言いながら僕は「たくろう」の頭をなでてあげました。その時の「たくろう」の顔が少し誇らしげに見えました。
でもその時が、僕たちの見た「たくろう」の最後の勇姿でした。
次回最終回に続く‥‥