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カナダ、ロッキー山脈のクマ騒動(その9)

夢中で森の中を歩き回りどれくらいたったろうか、目の前に小さな板で作られた橋ときれいな小川が現れた。人間の気配を感じて嬉しくなったが、よく考えるとここはクマさんにとっても格好の水飲み場に違いないのだ。

一息ついてる場合ではない。死を覚悟で森の中を前進するしかないのだ。相変わらず森林から抜け出せない。トラウマになりそうだ。悪夢であってほしい。

それにしても憎たらしいのは、この道を教えてくれたユースホステルのハンサムなお掃除係りのお兄さん、私達にクマの巣コースをお薦めするなんて。それに途中で寄った町の本屋のおじさん。

「湖に行くには、この道がいいよ」

「帰りに、この本を買って帰ってね、すごく素敵なハイキングになるよ」

「ハブァナイストリーップ」

「何を言ってやがんでぇ!!」私達はこんな無責任な二人の口車に乗って、このクマの巣 コースに来てしまったのだ。私と友人Mさんはいつの間にか恐怖が憎しみに変わり、大声を出していた。


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